反物質 第2章 田代という密室 1972年、総理官邸の地下では、まったく別の未来が封筒に入れられていた。「次世代抑止力基礎研究」核ではない。核という言葉を使わない。だが核を上回る。国家がその存在を否定しながら、その影だけで敵を沈黙させる力。後に「反物質兵器」と呼ばれる構想... 2026.05.17 反物質
反物質 第1章 鬼面の来訪者 2万年前、男鹿半島の海岸線は現在よりも少し日本海側へ広がり、冬の海は低い雲の下で鈍く光っていた。氷期の風は硬く、森は現在のような豊かさをまだ持たない。それでも人はいた。季節を追い、獣を追い、魚を獲り、火を囲み、石を割った。やがて縄文へ連なっ... 2026.05.17 反物質
反物質 序章 湖底の青い沈黙 2008年3月11日、秋田大学の佐藤涼教授は、一ノ目潟の湖面に浮かぶ小型調査艇の上で、採泥プローブの振動を手のひらに感じていた。男鹿半島のマールは、火山が大爆発を起こしてできた丸い傷跡である。山体を積み上げる噴火ではない。地下で水とマグマが... 2026.05.17 反物質