反物質Ⅱ 序章 呼ばれぬ名

二つの名は、互いを知らないまま生まれた。
一つはソウルの白い手術室で、泣き声を上げないまま取り上げられた。崔志遠。遠くへ志す者。母はその名に、逃げ延びてほしいという祈りを隠した。誰にも奪われず、誰の記録にも正しく載らず、遠くまで生きてほしい。だが赤子の小さな瞼の奥では、母の祈りより古いものが、かすかに震えていた。

もう一つは男鹿の冬の病室で、世界に抗議するように泣いた。深山蒼真。青ではなく、空の蒼を背負う名だった。父はその泣き声を聞きながら、この子は鍵ではないと自分に言い聞かせた。白神で閉じたものが、血の中でまだ続いていることを知っていたからだ。

湖底の船は眠っていた。眠っているものは、死んだものとは違う。水圧の下で、泥の下で、2万年の時間の底で、それは人間の名を知らないまま、ただ反応だけを待っていた。外殻片は世界のどこかで薄く光り、神籠という名の器は、起こす者と眠らせる者の境界を探していた。

国家はそれを抑止力と呼び、市場はそれに値札をつけ、諜報員たちは対象という言葉で人間を数えた。けれど、名を呼ばれる子どもたちは、誰かの兵器でも、誰かの商品でもなかった。母に抱かれ、父に隠され、別の父に育てられ、竹刀を握って自分の中心を探すしかない少年たちだった。

やがて、志遠は蓮となり、蒼真は父の沈黙の中で育つ。二人が初めて同じ場所に立つまでに、多くの嘘と、いくつもの善意と、取り返しのつかない死が積もる。

これは、湖底の船を起こす物語ではない。

眠らせるために、少年たちが自分の名を取り戻す物語である。

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